月別アーカイブ: 2019年9月

日米の税法、ここが違う!~チップについて~


米国では従業員が直接受け取ったチップだけでなく、雇用主が顧客に請求して従業員に支払ったもの、職場でプールしていて各従業員に配分したもの等、全てのチップを収入として所得税申告しなければなりません。

日本では、チップの習慣はありませんし、職場によっては従業員が顧客からチップを受け取ることを禁止しているところもあります。もしチップを受け取ることを禁止している会社でチップが発生した場合、従業員が受け取ったチップは会社の収入として扱い、会社がそれを従業員に支払う際には、給与として扱います。日本では当然、給与支払い時に給与から税金、社会保険料が差し引かれますので、確定申告の必要はありません。チップの受け取りを認めている会社の場合、チップ収入は従業員の雑所得として課税されますが、1カ所からのみ給与を受け取っている給与所得者は、雑所得の額が年間20万円以下の場合、申告義務がありません。ですから、申告しなければ課税されないことになります。申告義務がなくても申告すれば課税されるので注意しましょう。

日米の税法、ここが違う~出国税~

米国市民及び長期永住者が市民権、永住権を放棄する際、

①放棄する以前の5年間の所得税額の平均額が16万5千ドル以上

②純資産額が200万ドル超

③放棄以前の5年間に税債務がないことを証明できない

のいずれか一つにでも当てはまる場合は、出国税が課せられます。出国税は全世界にある含み益(課税されていないキャピタルゲイン)を有する資産を、市民権、永住権の放棄時に売却したものとして課税されるのです。

ただし控除があり、2018年は71万1千ドルを利益から控除できました。

日本でも2015年に同様な制度「国外転出時課税制度」が創設されました。対象者は戸籍に関係なく、

①有価証券などを1億円以上所有していて、

②国外転出する以前10年間において日本国内に5年を超えて住所または居所を有している居住者です。

この制度ができた背景には、富裕層の課税逃れがありました。租税条約により、有価証券のキャピタルゲインは所有者の居住国に課税権があります。これを利用して、多額の株などを持った富裕層がシンガポールや香港など、キャピタルゲイン課税のない国に移住し、そこで資産を売却することで課税を逃れるという租税回避行為が増えていました。これを防ぐべく、同制度が設けられたのです。

日米の税法、ここが違う!~自宅を売却した際の控除について~

課税対象の資産を売却すると、キャピタルゲイン(売却価額から購入価額等を差し引いた金額)に税金がかかります。

アメリカではこの資産が自宅の場合、夫婦のジョイントリターンの形で申告すると、キャピタルゲインから50万ドルまでを控除できます。

日本にこの制度はありませんが、夫婦が自宅を共有していた場合、各々が確定申告で3000万円まで控除できます。

アメリカで前述の控除を利用するには、売却日から5年以内にその家を2年以上主たる自宅として利用していたこと、2年以上所有していたことが条件になります。

日本の条件は緩く、1年以下の短期間でも主たる住居として所有、使用していれば3000万円の控除が得られます。

アメリカでは、自宅を売却した際に生じた損失(キャピタルロス)は他の収入から差し引けません。

日本では①5年以上所有している、②住宅ローンが残っている、③住宅の売却代金で住宅ローンを返済しきれない、等の条件を満たせば、他の収入と相殺でき、かつ、相殺しきれなかった金額は3年間繰り越せます。日本では、土地の価額が下がったために住宅を購入して損をした人が多いため、このような措置が取られています。