前回は暦年課税制度と相続時精算課税制度の概要の紹介をしました。今回はこの制度をどのように使い分けたらよいのかを考えていきます。
まず、暦年課税制度を利用した贈与は贈与から3年経てば相続税には影響しなくなります。但し、基礎控除額が1年に110万円しかないので一度に大きな金額を贈与することはできません。とは言え、仮に、子、孫が5人いれば基礎控除額内の贈与でも年間550万円を無税で贈与できます。これを10年続ければ5500万円になります。仮にこの人が資産家で相続税率が50%掛かるのであればこの贈与で相続税が2750万円安くなったことになります。この制度は長期に亘って少しずつ子、孫に財産を移転するのに向いています。
次は相続時精算課税制度です。基礎控除額が2500万円あり、それを超えた部分も20%の贈与税で済みます。でも、この財産は相続時には全額、相続財産に加算されて、相続税の対象になってしまいます。この制度は、例えば、子が家を建てる時にその敷地を贈与するといった場合に利用されます。これは節税策というより財産移転を早期にするための制度と考えた方が良いでしょう。また、相続時に加算される財産額は贈与時の価額ですので贈与財産が値下がりしていると損をしてしまいます。