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2009年5月25日(月)

勤労税額控除の提案
 
 

同じ所得控除でも

 所得控除等の課税所得を減ずる制度は累進課税の下では、同じ減額幅でも、高所得者ほど税額の減額効果が大きくなり、そういう恩恵の効果は高所得者ほど有利になっています。

 垂直的公平観からすると、不公平ということになります。


高所得者ほど控除も大きい

 給与所得控除の場合は、課税所得の圧縮が定額ではなく、所得比例的に大きくなるので、高収入者に一層有利に作用します。

 所得額を操作するような税制度は、その制度の趣旨に反して、高所得者優遇の結果になるので、所得の多寡に関連させないような単純公平な制度にするには、税額控除がその要求に最も沿うものと言えます。

 特に、「給付つき税額控除」ならば、年税額が控除額より小さくても、控除不足額は給付されるので、制度趣旨が損なわれることがありません。



給付つき勤労税額控除の提案

 「給付つき税額控除」については、最近3/19の日経新聞の「大機小機」欄に目新しい提案がありました。

 正規雇用者のワークシェアリングも視野に入れた本格的な雇用政策として、勤労税額控除を導入すべきとしています。

 所得税・住民税から控除し切れなかったら、控除不足分は給付されるというものです。

 具体的には、100万円超300万円までの給与収入に対し15%の税額控除を認めるというもので、100万円程度の収入で満足しないで300万円ぐらいまでは頑張って働こうとの気持ちにさせる、勤労へのインセンティブ効果を期待するものです。


給与所得控除の原則廃止

 100万円超の給与への税額控除ということになれば、65万円を超える部分の給与所得控除とは制度重複になりますから、給与所得控除は65万円の定額制に置き換わるべき、ということになります。

 こうなると、高収入者の受けていた恩恵が低所得者に流れるので、所得再配分機能が制度に組み込まれ、垂直的公平の実現に功を奏することになるとともに、制度改正実現の財源捻出もできてしまいます。