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2008年5月30日(金)

日独の税金裁判事情
 
 

「税のモラル度」最高の国

 独財務省HPによると日本は「脱税はいかなる場合にもしてはいけない」と考える人の割合の世界一高い税モラル国であるようです。

 税モラル先進国だからなのか、日本では税金訴訟は多くありません。

 「世界の税金裁判」という本によると、1999年のドイツの税務訴訟数は70,990件であるのに対して、日本は232件となっています。因みに人口比は日本が1.5倍です。

 この顕著な差は何を意味しているのでしょうか。

 税モラルの差としては説明がつきそうにありません。

訴訟以前の係争数と救済率は?

 税金裁判になる前に、行政不服審査の申し立てがなされているのですが、ドイツでは税金裁判数の約10倍の異議申し立てがなされ、そのうちの約8割が救済されています。

 日本でも異議申し立ての数は、税金裁判の約20倍ありますが、納税者の主張が認められるのはそのうち1%です。部分的に税務署処分を自ら修正するものを含めても救済率は1割ぐらいしかありません。


 


裁判での救済率は?

 ドイツでは、行政救済は8割で、残りの2割のうちの半分が裁判になり、裁判での納税者の救済率は完全救済が1割、一部救済が1割といったところです。

 日本では、1%行政救済のあと、訴訟に至るのは5%で、そのうち裁判での完全救済が3%、一部救済が3%といったところです。

 日本では、行政と司法が一体となって国民の反旗からの国の税制を守っています。

 国に異議を唱える人は限りなく少なく、異議を唱えても3%か5%ぐらいしか救済されず、徒手空拳の虚しさを覚えつつ沈黙させられています。

「税のモラル」の中身と関係あるか

 裁判所は正義の判断をするところという幻想、裁判の敗者は税金逃れをした悪人との連想、国は間違いをしないとの先入観、圧倒的多数の国民は税金の申告をしないで済む税制、税をめぐる争いは泥棒や交通事故に遭うことより縁の薄い事件であること、などなどが日本の税モラルの中身のように思われます。

 「税のモラル」先進国というのは、我が国の場合、誇れないことなのかもしれません。