バックナンバー  2008年2月  2008年3月 
 

2008年4月30日(水)

「控除」は「減算」
 
 

清算所得の対象になるもの

 会社の解散では清算処理をして原則としてすべての財産を現金化します。その現金ですべての債務の弁済をして、残りがあればそれは株主のものです。

 但しその現金が当初に出資した金額と既に課税済みの所得との合計額を超えていたら、その金額は株主に分配される前に課税未済部分としての清算所得として最後の法人課税の対象になり会社は税負担を負うことになります。

清算所得の計算構造

 課税清算所得は「残余財産の価額からその解散の時における資本金等の額と利益積立金額との合計額を控除した金額とする」との規定になっています。

 「控除」とは引き算するとの意味ですが法人税法では差し引き後の金額がマイナスとなった場合には、ゼロを限度とする計算までしかしないとの意味に解されています。

 ですから結果マイナスでもゼロ扱いで納付額はゼロというだけの効果しかありません。

 差し引き後マイナスになったら、過去の納めすぎの税金を返えしてくれる、というのがフェアーな税制とも思えますが、一度収納した税金は滅多なことでは戻さない、との強い国家意思の表明になっています。


マイナスのマイナスはプラスだが

 もし残余財産がゼロで「資本金等の額と利益積立金額との合計額」がマイナスだったら、清算所得の計算式からして「ゼロからマイナスの合計額を控除した金額は、ゼロからマイナスをマイナスする」ということになり清算所得の金額はプラスとなるように見えます。

 そうだとすると残余財産がゼロなのに課税が起きることになります。

 マイナスが大きければ大きいほど課税が大きくなります。

 しかし、これは制度的に矛盾していますし、実行困難なことですからありえないことです。

 マイナスを控除した結果加算となるということは「控除」という言葉の限界を超える結果を生んでいます。控除はあくまで減算の意であって結果加算までを意味するものではありません。

 余財産から控除する「資本金等の額と利益積立金額との合計額が、マイナスだったら控除する金額はないものとする」というのが素直な日本語の理解であり順当な法律解釈だと思われます。