2008年4月28日(月) |
確定申告によって
源泉徴収義務は消滅するか
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「弁護士顧問料について源泉所得税を徴収しないで下さい」と、依頼を受けることがあります。 「確定申告できちんと納税しているから問題ない」とのことのようですが果たしてそうなのでしょうか。 こんな主張は通るか 源泉徴収制度は、申告納税制度を補完するものであり、仮に会社が源泉所得税を徴収しなかったとしても、報酬受給者がその所得を確定申告して納税すれば、その時点で国の徴収すべき所得税の実額は充足されるのだから、その所得に係る源泉徴収義務は自然消滅すると考えるべきである という主張で係争し得るでしょうか。 ストック・オプション訴訟で争った いわゆるストック・オプションに係る所得区分についての司法判断が一時所得と給与所得に分かれていた時期のことで、その権利行使益について給与とは解さないことにして、所得税の源泉徴収をしなかったことに対し源泉所得税の納税告知処分を受けたという事案です。 |
源泉徴収は結果オーライを認めない 2007.1.12に裁決があり、次のような判断が下されています。 源泉徴収は、所得税法に基づき正当に徴収されるべきものであって、その受給者が確定申告の際に源泉所得税自体の過不足額の精算を行うことを予定しておらず、源泉徴収がされていない場合又はその税額に不足がある場合であっても、受給者の確定申告の際に、源泉徴収漏れの税額が同人から直接徴収されることはなく、国と法律関係を有するのは徴収義務者のみで、また受給者から徴収されるべき源泉所得税を確定申告により受給者が納税することはできないのであるから、受給者の確定申告によって、請求人の源泉徴収義務が消滅することはなく、いわゆるストック・オプションに関する司法判断が割れていたとしても、それが争う上での正当事由にならないということです。 よくある話じゃないか 未払給与の税金の精算を確定申告で済ませてしまうということは特別なことではなく実際の実務ではよくある話です。 しかし、法律はそんなことを予定していません。 この裁決からの教訓「争わない事」「逃げ道を用意しておく事」が、実務対応上求められるということでしょうか。 |
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