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2007年12月11日(火)

公園が住所の是非

 
 

事実経過は

  1. 男は、平成10年ないし11年頃から大阪市北区の扇町公園を起居の場所とする生活を開始し、平成12年頃からテントを設営してきた。
  2. 男は、平成13年2月16日、野宿者支援運動の事務所を住所とする届出をした。
  3. 男は、市より住民登録を職権抹消する旨の予告通知を受けたので、市に対し、平成16年3月30日付けで、本件テントの所在地である扇町公園を住所とする転居届を提出した。
  4. 市は、男に対し、同年4月20日付けで「住所とは認められない」旨記載の本件転居届の不受理処分を通知した。
  5. 男は、市長に審査請求を行ったが、市は同年12月27日、棄却裁決をした。
  6. 男は、平成17年3月16日、本件訴えを提起した。


地裁と高裁で判断が対立

 争点は、公園テントの所在地が住民基本台帳法にいう住所に当たるか否かということですが、地裁はこれを是とし、高裁は否としました。現在最高裁で判決待ちです。

 住所とは、という一見単純な問題で判決が分かれるとは不思議な気がします。

 住民基本台帳法は住所概念を地方自治法に委ね、地方自治法は特に定めをおいていません。

 民法に依拠すると、「各人の生活の本拠をその者の住所とする」としています。

住民登録ができないことによる不利益

 住民登録がないと参政権(選挙権、被選挙権など)を行使することができないばかりか、国民健康保健やパスポートの交付等も受けることができず、生活保護等の申請も困難になります。

税法も似た規定振り

 税法も似た規定を置いており、住所の概念と納税義務は深く結びついています。

 税法でも、住所とは生活の本拠をいい、住民票の所在地のことではない、と理解されているものの、本事例の公園テントの所在地をもって住所と言い得るかは疑問のわくところです。

 この人のように判決で、生活の本拠としての住所が否定されているまま、相続その他の課税関係が生ずることはあり得ます。

 税法もこれに倣ってこの人を日本国内に住所を有しない者と判断すると、 国内在住にも拘らず外国在住者と同様の扱いになるという変な矛盾が生じてしまいます。