バックナンバー  2007年8月  2007年9月 
 

2007年10月19日(金)

相続財産と相続人の債権者

 
 

 被相続人(A)が亡くなり相続が発生した場合、相続人B、C、Dの内、相続人(B)の債権者(甲)は、被相続人の相続不動産から自己の貸したお金を回収することができるのでしょうか?

1.遺産分割協議をした場合

 相続人全員で、相続財産について遺産分割協議を行った場合、法定相続分を超える部分については、登記をしなければ、第三者に対抗できません。

 そのため、債権者甲が、相続人Bの法定相続分について差押さえした場合、例え、遺産分割協議でCの所有としても登記を先にしなければ甲に所有権を主張できません。


2.遺言があった場合

 被相続人Aが、相続人Cに相続財産を「相続させる」旨の遺言をしていた場合、遺産分割の方法の指定と考えられています。

 そのため、登記なくして所有権を第三者に主張することが可能です。
(最判平成5年7月9日判時1525−61)

3.遺留分減殺請求

 2.の場合に、債権者甲は相続人Bの代わりに遺留分減殺請求をするはできません。

 遺留分減殺請求権は、権利者の一身専属に関する権利であり、第三者が代わって行使することはできないからです。


< まとめ >

 債権者が、債務者の取得する相続財産から、債権を回収することができるかどうかは、被相続人の意思表示に左右されます。

 相続財産から、貸したお金が返してもらえるとは限らないのです。