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2007年9月10日(月)
時効、そう甘くはない!
脱税犯の公訴時効 3

 
 

 脱税犯でも「時効」の適用はあります。

 刑事訴訟法では、この時効のことを公訴時効と呼び、その期間は5年です。

 この公訴時効は、いつから進行するのかですが、原則として、申告期限からです。  

 また、脱税事件の場合、国税が告発し、それを受けて地検では逮捕、拘留、起訴となるのですが、殆どの場合、在宅起訴になります。

 この在宅起訴というのは、身柄を拘束されずに裁判を待つというもので、証拠隠滅、逃亡等などの新たな犯罪が行わないと判断された場合などに取られる措置です。

(1)税務のような時効の中断はない

 公訴時効の特徴は、税務と違って、原則、時効の中断はなく、時効の停止です。

 時効を停止させるには、起訴(正しくは、公訴の提起といいます)するしかありません

 しかし、脱税犯の場合、身柄を拘束していない場合がほとんどですから、在宅起訴しようと起訴状を送達しても、 所在不明、逃亡している場合などは、起訴状は送達されていないことになります。

 この場合、起訴から2ヶ月たっても脱税犯の身柄を拘束できなければ、地裁は検察の公訴を棄却します。

 そうしますと、裁判所に起訴の請求しているこの2ヶ月間の時効の停止はありますが、棄却されますと時効は再び進行します。

(2)税務のような公示送達がない

 そこで、検察は時効阻止のため、再び所在不明なまま在宅起訴を繰り返します。

 そして、身柄を拘束するまで、この起訴を何回も繰り返します。

 そうしますと、実質的に、時効成立ははなはだ困難ということなります。

 前々回取り上げた「10年間逃亡し、御用となった脱税犯」の話題では、地検は43回も起訴を繰り返し、時効を阻止しました。

 これを日数で計算すると、60日×43回=2,580日、これを365日で割ると、7年間も時効が停止していたことになります。

 もし、税務のような公示送達という制度があれば、こんな過激なことをしなくても時効の停止は容易だったことでしょう。