2007年8月24日(金) |
租税法律主義の限界に挑む |
武富士のひかりと影 消費者金融大手「武富士」の2007年3月期通期の最終損益は4814億円の赤字(前期は391億円の黒字)となり、上場後初めての赤字転落となりました。 その武富士の過去最高額といわれる株式贈与申告漏れ1330億円追徴課税裁判で、本年5月23日、国側敗訴の判決がありました。判決が確定すると、国は追徴額に4.4%の利子をつけて還付することになります。
武富士株を所有する新設オランダ法人の株が1999年、香港在住の長男に贈与されました。 当時の税法では、海外に生活拠点を置く日本人が贈与によって海外財産を取得しても納税義務は生じませんでした。 これに対して東京国税局は、実質的な生活拠点は日本にあり、香港居住は課税逃れが目的であるとして、2005年に約1600億円の申告漏れを指摘、約1330億円の追徴課税処分を決定しました。 |
素直な解釈の地裁判決 唯一の争点は贈与時の住所でした。東京地裁は、「3年半ほどの香港滞在期間中、約65%に相当する日数、香港に滞在し、起臥寝食する一方、国内には約26%しか滞在していなかったのであって、日本国内に生活の本拠を有していたと認定することは困難であり、被告の主張は、原告の租税回避意思を過度に強調したものであって、客観的な事実に合致するものであるとはいい難い」と判決しました。
税法の抜け穴を見つけて課税逃れを図ることに対しては、立法により対処するのが租税法律主義の憲法原則に沿うことではあるが、間に合わないときには、とりあえず事実認定や拡張解釈によって課税しておき、争いになったときは裁判に判断を仰ぐ、というのが最近の国税側のスタンスです。(とはいえ、この件では、随分のんびりした抜け穴塞ぎではありました。) 立法の不手際を租税法律主義の限界への挑戦でカバーしているようにもみえます。 |
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