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2007年7月20日(金)
自社株贈与の相続時精算課税
こんな事業承継税制はいらない!
 
 

 事業承継をスムーズに行うためには、後継者を決めるだけでなく、経営権の基盤となる自社株式の多くを後継者にもたせることが重要です。

 このような趣旨から、事業承継税制の一環として平成19年度税制改正で創設されたのが
「特定非上場株式の贈与の特例」です。

 この特例は、従来の「相続時精算課税制度」を拡充したもので、中小のオーナー経営者が、自社株式を次期後継者となる子供に贈与する場合、贈与する親の年齢を引き下げ、非課税枠も2,500万円から3,000万円に引き上げたものです。

 この特例の活用で、早い段階で後継者となる子供に自社株を贈与し、権限を与え、相続時に起こりがちな遺産を巡る紛争を回避できると説明されていますが、本当にそうでしょうか、検証してみましょう。


(1)4年後の高いハードル

 贈与後4年経過時点で、次の要件を満たしていなければなりません。

  1. 当該株式の贈与を受けた子供は、その会社の代表者に就任していること(代表者は一人)、
  2. 発行株式の50%超の保有、かつ、議決権も50%超であることです。

 4年後に、この要件を満たすことは至難です。株価によっては多額の納税資金が必要な場合もあります(税率20%でも)。

 また、4年経過前にどちらかが死亡した場合は、その死亡時点で上記要件を満たしているかどうかを判定することになっています

 そして、4年後この要件を満たしていないときは、この特例が取り消され、暦年課税の贈与申告に修正しなければなりません。

 非課税枠最大3,000万円を使った後の修正申告では、1,220万円の追徴になります。

(2)各種の特例計算が適用できない

 この自社株贈与の特例を適用すると

  1. 小規模宅地等の課税価格の特例計算(課税価額の最大80%の減額)、
  2. 特定事業用資産の課税価格の特例計算(課税価格の10%の減額)の適用ができません。
 本当に、これで事業承継対策の税制と言えるのでしょうか。