2007年6月15日(金) |
同じ「裏書」でも雲泥の差 |
株券はもちろん手形も正当な有価証券です。 これらは、私法上の権利(財産権)を表彰する証券であって、その特徴は、それによって表彰される権利の移転(裏書、譲渡)または行使(手形金額の請求、名義書換請求)が証券の授受(証券の占有)によってなされるということです。 (1)手形の裏書 手形の裏書譲渡及び手形の割引(これらの行為を手形の譲渡と言います)並びに銀行への取立て依頼も含め、これらは、手形の「裏書」という行為によって行われます。 裏書が連続していなければ手形金額の支払いは拒絶されます。すなわち、裏書の連続が権利の譲渡を証明することになるからです。 換言すれば、裏書が連続した手形の所持人は、その手形の正当な権利者であるとみなされると言うことです(このことを裏書の資格授与的効力とも言います)。 もっとも、上記の銀行への取立て依頼(取立委任裏書)は、裏書という行為を伴いますが、裏書の連続は要求されません。
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(2)株券の裏書 商法上も会社法上も株券の裏書についての根拠条文がみあたりません。株券の裏書制度については、昭和41年の改正商法で廃止されたはずですが、裏書き欄の無い株券はありません。 手形であれば、手形が不渡りになれば裏書人にも当該手形金額の支払い責任(担保的効力)が発生しますが、株券にはこのような担保的効力はありません。有るのは、
のみです。 ですから、株券がA→B→Cと移転した場合に、裏書きなどせず、A名義「株主A殿」としたまま、Cがこの株券を所有し、株主名簿にC名義を登録するのが、会社法の趣旨に沿った方法なのです。 会社法でも株主名の記載は不要で、無記名証券となりました。 ところが、株券を相続して名義書換を請求しても「遺産分割協議書」を要求します。 実務界では、裏書きの連続を前提した考えや取扱いが未だ主流です。 これは、商慣習が法律を無視しているとしか言えません。 |
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