バックナンバー 2006年9月 2006年10月 
バックナンバー 前回 
2006年10月30日(月)

法令用語の常識?

 
 

 税金裁判の判決文を読んでいたら「法令用語の常識」という言葉に出くわしました。

 一般に法令において「Aその他のB」という表現を用いる場合は、Aはより広い意味を有するBの例示としての関係にあり、そうである以上、Bの意味内容は、その例示であるAの意味内容の延長上のものとして解釈されるべきだ、という判決なのです。

  随分とレベルの高い、難しい常識です。


第一常識

 「Aその他のB」というときAはBの一例示ということです。「月賦、年賦その他の賦払の方法」というような用例で確かめられます。

 確かに、月賦、年賦は賦払いの一例です。

  これに対し、「の」のない「Aその他B」というときは、AとBは並列で、どちらかといえばAが主でBが従の関係になります。

 「恩給、年金その他これらに準ずる給付」というような用例です。

 ここでは、AとBは範囲を異にしています。


第二常識

 「Aその他のB」というとき、BはAの内容によって限定される、ということです。

 判決は、「公益上その他の事由に因り」という法令文をあげて、公益とは無関係な「その他の事由」を列挙するわけにはいかない、と説明しています。

 「金銭その他の資産」「不動産その他の資産」というような用例をみると、なるほどと思えるところです。

争点は税理士報酬

  裁判は、弁護士事務所の会計処理、税金申告、税務相談を税理士がしたので、それに伴い支払った税理士報酬につき、実は必要経費にはならないものだとして、税務署が更正処分をした事案でした。

 税理士は弁護士の妻でした。

  納税者は「事業に従事したことその他の事由」という法律の条文は雇用などの「従」たる働き方を指しているのであり、妻たる税理士は夫の弁護士とは対等な関係であり、従たる性格がないから、この条文を根拠にした否認処分は正しくない、と主張しました。


判決は納税者勝訴

 判決文は、「その他の事由」について、全く無限定のものと解することは法令用語の常識にも反するものである、として納税者の言い分に沿った見解を示しました。

 平成15年7月16日東京地裁民事三部の藤山雅行裁判長の判決でした。

 ただし、高裁・最高裁ではこの第二常識は覆り敗訴しました。