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2006年10月11日(水)
遺言の悩ましさ
 
 

 遺言の大部分(99.9%)は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。しかし遺言があっても、必ずしも「遺言者の意思」 通りに財産が分配されるとは限りません。


(1)自筆証書遺言の問題点

  この遺言は、家裁の検認を受けなければなりません。

 検認を受け、相続人の誰からも異議がなく、検認のある有効な遺言書を提示すれば「登記」は可能ですが、預金の払戻を請求しても銀行は、「他の相続人全員の承諾書」又は「遺産分割協議書」を要求するのが一般的な対応です。

 検認済みであっても遺言の真偽をめぐって争いが生じるおそれがあるからです。

  また、家裁が発行する「検認済証明書」に「相続人○○は、この遺言書の筆跡に疑義があると陳述した」などの記載があれば、不動産等の相続登記はできません。

  それは、登記所は権利を確定する機関ではなく確定した権利を公示する機関ですから、遺言自体に疑義があるものに権利確定を委ねるわけにはいかないからです。




(2)公正証書遺言の問題点

  この遺言は公文書なので、私文書である自筆証書遺言のような問題点はありません。

 家裁による検認手続きは不要であり、遺産分割協議書を経ないでも登記の移転その他の財産の移転が可能なので、相続事務が迅速に行われる点有効です。

 また、遺言の効力をめぐる争いの予防にもなります。

 しかし、遺言者にとって望ましい財産の分配であると思っても、相続人、受遺者にとっては、相続税法上の恩典(小規模宅地特例、特定事業資産の特例等)が適用されず相続税額の納付に苦慮することもあります。

(3)適正な遺言

 一概に言えませんが、

@ 生活根拠となる不動産についてはできる限
   り単独で所有する事

A 自分の事業を承継してくれる相続人にはそ
   の事業用財産を残す事

B 預貯金については、銀行名・支店名・口座
   番号を記載しておく事

 以上が、目配りの行き届いた遺言ということでしょうか。