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2006年10月3日(火)
〜防ダニ布団は医療費になるか?〜
 
 

 防ダニ用寝具の購入費用が医療費控除の対象になるか、争った人がいます。

 税法上の医療費は一般に医療行為より狭く(美容や予防医療は含まない)、しかし、通院費や医師等の送迎費を含むなど、より広い面もあります。


言い分を聞いてみると

  争った人の主張は、アレルギー症状が治療によっても改善せず、また、痒みによって十分な睡眠がとれない状態が続いたところ、医師と相談の結果、防ダニ寝具を購入したら、1か月後からは症状も改善され、以後は薬の使用量も減り、現在も症状は安定している、ということから、薬以上に症状の改善が得られたことは明らかであり、これの購入・使用は治療行為に該当し、疾病を直し、治療効果を上げるという点では医薬品と同一であり、税通達にいう「自己の日常最低限の用をたすために供される義手、義足、松葉づえ、補聴器、義歯等の購入のための費用」に該当する、というものです。




前例もあり、当局のお墨付きもある

  さらに原告は、新聞記事にも「防ダニ寝具効果アリ」との報道があり、そこでは、国税庁が「予防ではなく、治療に必要かどうかが基準で、個々の事情を聞いた上でケースごとに判断している」旨のコメントをしており、他の税務署においても、数年前から防ダニ寝具の購入費用を医療費控除の対象として認めている、実態がある、と主張しています。

税務署の反論

  税務署側は、防ダニ寝具を購入・使用することは、医療費控除の治療行為でなく、それは薬事法に規定する医薬品でもなく、税通達に掲げる「義手、義足、松葉づえ、補聴器歯等」のように医師の診察を受けるための直接の費用でもなく、基本的には患者の家庭内における生活環境の改善、整備のためのものにすぎない、と反論しています。


  なお、国税庁の見解とした新聞記事の事実関係については判断する立場にも、追究する立場にもなく、また、いくつもの税務署において防ダニ寝具の購入代金を医療費控除とする申告が受理されていたとしても、それらは変更されることが税法上予定されている、としています。


やはり、勝てなかった

  国税不服審判所は何の留保もなく税務署側に軍配をあげました。

 もし、防ダニ寝具を医療費控除とする申告をしていた人がほかにいたとしたら、この係争のあおりを喰っていることでしょう。