[回答]
納税者が死亡した場合の必要経費の取り扱いについては、別段の定めがあるものを除き死亡した時までにその費用に係る債務が成立しているかどうかで判定します。(所得税法基本通達37-1)
そのため、Aさんが死亡した時点で従業員に対する退職金の債務が成立しているかどうかが問題となります。
Aさんが死亡後、当事業は他人であるBさんが引き継いでいますので、Aさんの死亡によってAさんと従業員との雇用契約は終了したと考えられ、退職金を支払うべき債務が確定したといえます。
よって今回の事例では、Aさんの財産から支払われた従業員退職金は、必要経費に算入されます。
仮に、その事業を他人のBさんでなく相続人が引継いだ場合は、雇用契約上の使用者の地位は相続の対象となる(民法896)ため、従業員との雇用契約は継続します。
したがって、従業員に退職の事実はなく退職金の支払事由に該当しないと考えられるため、必要経費に算入されませんのでご注意ください。