上記の会長に係る相続が発生した際には、当社への貸付金は相続財産を構成することになります。
そして、相続税法上、この貸付金は額面のまま評価される上に、返済される可能性が低いため、納税資金不足の要因となることがあります。
では、どのような相続税対策が考えられるでしょうか。
当社は毎年利益を計上しており、かつ、債務超過会社でもないため、法人での税負担を考慮すると、債務免除益を計上するメリットはあまりないと言えます。
その条件で、中小企業の事業承継対策としても効果的な方法として「債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ、以下「DES」と記載)」をあげることができます。
DESの活用方法は以下のとおりです。
まず当社の株式評価額を算出。その上で、第3者割当増資を行います。
この際の増資は、会長の貸付金債権を現物出資するやり方を選択します。
この取引を会社側からみると、役員借入金が資本金に振り替わることになります。
逆に会長の側からみると、貸付金が株式化することになります。この場合、株式の評価額は額面金額ではなく時価で計算されることから、毎年利益を計上する会社であれば、少しでも早い時期にDESを実施することが賢明な相続対策となるでしょう(法基通2-3-14)。
ただしDESを実施する場合の注意点として、株主にとって有利な発行価額で増資した場合には、他の株主に対する贈与の問題が発生する可能性があります。
また、DES後の資本金が多額になると、法人税に係る均等割額が増加することに留意する必要もあります。