「出向」とは、「労働者が使用者(例:出向元法人)の業務命令により、その雇用関係を継続したまま、他の使用者(例:出向先法人)の下で労働を提供すること」をいいます。
この出向については、出向元、出向先両者間における給与の負担もそれぞれの立場や経済的事情、経済環境等により異なり、さらに出向者本人に対する給与の支払形態もいろいろなケースが存在していますが、税務上は次のように取扱われています。
- 出向元法人が負担する給与格差補填金<法基通9-2-35>
出向者に対する給与は出向元法人が支給し、出向先法人から給与負担金を受け入れているケースが一般的に多いようです。
この場合、受け入れた給与負担金が出向元法人が支給した給与相当額以下であるときには、出向元法人が結果的に負担することになる給与相当額の損金算入の可否が問題となります。
しかし、この場合の出向元法人における給与格差部分の負担は出向元法人と出向者との間の雇用契約に基づくものであって、単なる贈与的性格のものではありませんので、次のような場合には、出向元法人の損金に算入することが認められています。
- 出向先法人との給与条件の較差を補填するためのものである場合
- 出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給できない場
合
- 海外子会社等への出向者に、出向元法人が支給する留守番手当
- 出向先法人が支給する給与負担金<法基通9-2-33,34>
出向者が出向先法人において役員となっている場合における給与負担金は、受け入れた出向元法人の出向者に対する支給形態により
「役員給与の損金不算入」の規定を適用することになります。
例えば、
A.出向先法人:
給与負担金として毎月80万円(年間960万円)を支出
B.出向元法人:
出向者に毎月50万円の給料と180万円×年2回の賞与を支給 (年間960万円)
この場合の給与総額はA=Bのため、何ら問題は生じないと感じられます。
しかし、毎月定額の給料(月50万円)は定額給与として、損金算入が認められると考えられますが、賞与(360万円)は損金不算入となる恐れがあります。
そこで、出向先法人が事前確定届出書を所轄の税務署に提出し、届出通りに支払えば、損金となる可能性がありますので、具体的な取扱いは税務署等にお尋ねください。