退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当や一時恩給などの所得
をいい、それには所得税と住民税が課税されます。課税される退職所得の金額
は、退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の2分の1相当額
とされています。退職所得控除額は、勤続年数が20年以下の場合は1年当り40万
円、勤続年数が20年を超える部分には1年あたり70万円で、最低控除額は80万円
とされています。(所法30)
しかし、この退職所得控除額は同一企業での長期の勤労に対する優遇が前提
にあるため、近年のように終身雇用制度が変化し就労期間が短期化している状
態は想定されていません。短期間勤労者などに対しては、給与を低く抑え高額
の退職金を支払うといった操作を行うことにより、2分の1課税を適用するなど
事実上租税回避に使われている側面があります。
また、退職金支給を止め在勤中の給与を引き上げたり、退職一時金に代え退
職年金を支給するなど、就労形態の多様化と伴に退職金支給形態も多様化して
います。
このような状況において、現行の課税制度では充分に対応しきれていないと
いう問題点が論じられています。
課税制度の見直しについては、政府税制調査会で、「多年にわたって支給さ
れるべきものが一時に集中するとの退職所得の性格に照らして、引き続き何ら
かの平準化措置が必要となる。」(税制調査会参考資料H18.5.12より抜粋)と
し、平成19年度税制改正に向け議論がなされています。
また、日本税理士会連合会は、「平成19年度・税制改正に関する建議書(H
18.6.28)」において、退職所得計算方式の根本的改正の必要性を説き、下記
の計算方式(退職所得控除額を勤続年数に関係なく一定額にするとともに、退
職所得の課税方式を勤続年数に応じて計算する方式)を提案しています。
{(退職所得の収入金額−退職所得控除額)/勤続年数}
×税率=(A)
(A)×勤続年数=退職所得に係る税額
詳細については、12月に公表予定の政府与党の平成19年度税制改正大綱を
お待ちください。