新着税務情報に戻る
◇新着税務情報◇
 〜相続
 相続/認知請求後の支払請求権による遺産相続
 

亡父の遺産分割後、父の子と名乗る人物甲氏が現れ、認知請求の裁判になり、父の子として認知されました。
その後、民法910条(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)に基づき、遺産についての支払請求がきました。
そのため、相続人である私が相続により取得した土地を渡したのですが、これは、私の譲渡所得となるのでしょうか?

民法910条(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
 相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとす る場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

 

 

ご質問の場合は、相続人と被認知者が連署した下記の書類等を提出することによって、譲渡所得課税は行われないことになります。

  1. その土地を被認知者が遺産分割によって取得したものであることを示す相続人と被認知者間の最終的な遺産分割に関する協議書    
  2. 被認知者が取得した土地は、遺産の現物分割によるものである旨を記載した被認知者の書面

 遺産分割後においては、遺産は相続人であるあなたの完全な所有物です。

 そこで、被認知者である甲氏からの支払請求に応じて、遺産(土地)を価額のみの支払いに代えて交付したことは代物弁済に該当します。(民482)

 代物弁済に該当すれば譲渡所得課税が行われます。(所法33)

 しかし、今回のような認知請求に伴う支払請求の場合には、課税の取扱いが異なります。

 民法910条において、遺産分割後の被認知者の請求が価額のみとされているのは、既に確定している相続人の遺産所有権の法的安定性及び、その状態を信じて取引した善意の第三者の権利を保護するためです。このような状態をわざわざ覆さなくても、被認知者の権利は価額による請求支払を認めることで充分補償されるとするのが法律の見地です。

 もし甲氏が遺産分割前に認知されていれば、遺産分割後に当該土地を取得しても、それは遺産の現物分割となり、あなたに譲渡所得課税は生じません。

 つまり、認知が遺産分割の前か後かによって同じ土地の取得における法律行為が異なり、それに伴う課税関係も異なることになります。

 しかし、遺産分割後に被認知者へ価額に代え現物を交付したとしても、そのことによって侵害される法的安定性や善意の第三者が存在しない場合、遺産分割前の認知と区別して、これを代物弁済として課税することには実質的に問題があると考えられています。

 そこで、このような場合は上記に掲げる書類等によって、被認知者が遺産の現物分割によって土地を取得したということが認められれば、相続人の譲渡所得課税は行わないことが相当とされています。