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2010年5月6日(木)

共有物分割なれど
 
  共有物分割は譲渡とされないという原則

 共有物の分割は、交換行為に類似するものの、原則として、税法上は資産の譲渡にはならないと取り扱われています。

 それでは、甲と乙とが、A土地とB土地とをそれぞれ共同で購入して共有(持分は甲乙2分の1)していた場合、共有に係る土地を、分割して、甲はA土地を乙はB土地を単独所有するというような時、これを共有物の分割だからとして、譲渡がなかったものと扱えるか、となるとにわかに疑問となりそうです。


共有物につき前提がある

 譲渡とされない共有分割では、1つの物を2人が共有で所有しているという関係が前提にあります。

 先の甲乙の事例では、2つのものを2人で共有しています。甲はB地の共有持分権を放棄する対価として効用の異なるA地の単独所有権を取得し、乙はA地の共有持分権を放棄する対価として効用の異なるB地の単独所有権を取得するということになります。

 従って、これには、分筆登記による共有分割の場合のような扱いにはできません。

 所得税法第58条の固定資産の交換の特例の適用がない限り、一般の譲渡として譲渡所得課税の対象とされます。


単独から共有への場合も同じ

 同じように、それぞれが単独に所有していた土地を共有とする場合も、実質的には、自己の所有に係る土地の共有持分と他人が所有する土地の共有持分とを交換することなので、本来の譲渡行為に該当します。

 この場合、分筆による分割に対応するような、隣接地同士の合筆による共有化だったら、分筆の場合の不課税の論理が合筆にも当てはまるのではないか、との類推が起きても不思議ではありません。

 でも、それはダメなのです。

 所有者の異なる土地は合筆ができないことになっているからです。

 複数の単独所有土地を一つの共有土地にするには、それぞれの単独所有土地に、他の者の共有持分権を新たに発生させる持分交換を先にして、合筆対象土地の所有者名義を同一にしなければならないからです。