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2008年1月31日(木)

TOBに応じるか否かで課税関係が異なるの?

 
 

 株式を第三者に売却し、売却益が出なければ税金はかかりません。

 しかし、株式をその発行会社に売却又は買取られた場合には、売却損益の有無にかかわらず、売却価額がその株式の「1株当たりの資本金等の額」を超えていれば、その超える部分の金額については「みなし配当」として源泉徴収20%され、さらに、配当所得して総合課税の対象とされます。

(1)企業買収に伴うTOBと株式の譲渡

 TOBとは、株式の公開買付けのことです。

 この公開買付けが発行法人の自己株式であっても、 個人株主がこのTOBに応じた場合、当該株式の譲渡には、株式譲渡益課税が適用され、譲渡益が出れば10%の課税、譲渡損がでれば課税なしです。

 しかし、TOBに応じなかった株主はどうなるのかです。

 一般的には、TOBを拒否した株主に対しては、株主総会の特別決議で普通株を強制的に買い戻せる全部取得条項付種類株式に転換、一株未満の普通株式の割当、同株式をTOB価格と同じ価格で買い取ります。

 その結果、会社が同種類株式を買い取れば「みなし配当課税」がかかるのではないかという疑問が噴出しました。

 また、拒否した株主の間から「TOBに応じた場合と拒否した場合とで課税関係が異なるようでは、税制がTOBに応じるよう後押ししているようなもの」との批判も上がりました。

 

(2)国税庁の見解

 国税庁は、「全部取得条項付株式をM&Aで活用する場面においては、会社が全部取得条項付株式を取得する際に、その対価として1株未満の株式を交付し、その後、株主からの求めに応じる形で、その1株未満の株式を金銭で買い取ることが多いと言われている。

 この場合には基本的には、みなし配当は生じず、株主側は譲渡損益の計上のみを行うこととなろう」と、条件付で「みなし配当課税」の対象にはならないことを明らかにしました。

法的には、

  1. 普通株と同種類株の交換であり、課税の繰り延べが適用される、

  2. 一株未満の買取りは、「みなし配当」規定から除外されている、が根拠のようです。