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2007年11月16日(金)

従業員持株会と議決権の行使

 
 

 従業員持株会は、一般的には、民法上の組合として設立されます。

 その理由は、

@法人税の課税がない、
A会員個人が受け取る分配金は配当所得
  として課税が行われ、かつ,
B配当控除の適用も受けられる、
C源泉税控除の適用も受けられる、

 という特典があるからと考えられます。

(1)共有株式と議決権の行使

 民法上の組合では、各組合員の出資その他の組合財産は各組合員の共有になりますので、従業員組合の財産である会社株式も組合員の共有になります。

 共有の場合、各共有者は共有物の全部についてその持分に応じて使用することが認められています。

 株主権は所有権ではありませんから、準共有となりますが、共有の規定が準用されますので、従業員持株会の会員はその共有物である会社株式について、それぞれの持分(持株数又は議決権)に応じて株主権を行使することができます。

(2)議決権の行使と会社法との関係

 会社法では、「株式が2以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者1人を定め、会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。」と規定しています。

 そこで、持株会の規約では、必ず、権利行使者を理事長と定め、会社に通知しています。

 また、権利行使者として選任された理事長は、各組合員の意思を総会に反映させるため、一つの議案に対し賛成票と反対票を投じることができます。

 すなわち、議決権の不統一行使が可能です。

 但し、株主総会の日の3日前までに、その通知が必要です。

(3)同族会社の判定と従業員持株会

  このとから、従業員持株会を1人の株主とみて同族会社の判定をしません。

 なお、事例としては少ないと思いますが、従業員持株会を「人格のない社団」として設立した場合には、同会を1人の株主として同族会社の判定をすることになるものと思われます。